遊びの前に「おかえりミッション」!小学生の帰宅後ルーティンをスムーズにするゲーミフィケーション
帰宅後、すぐに「遊びたい!」となる子どもたちへ
学校や習い事から帰宅した子どもたちが、玄関を開けるなり「ただいま!」と同時に遊びのスイッチが入る。それは元気な証拠である一方、親御さんにとっては「手洗いとうがいをして」「宿題は?」「明日の準備は大丈夫?」といった声かけを繰り返す日々の始まりでもあります。
何度言っても聞いてもらえない、遊びたい気持ちが優先されてなかなか行動に移さない、結局親子で険悪な雰囲気に…といった経験をお持ちの親御さんは少なくないかもしれません。帰宅後の時間は限られているため、スムーズにルーティンをこなすことは、その後の自由時間を確保する上でも、親子のストレスを減らす上でも重要です。
この課題に対し、「育児をゲームに!」では、育児タスクを遊びに変えるゲーミフィケーションのアプローチを提案しています。今回は、小学生の「帰宅後ルーティン」を楽しく、子どもが自ら進んで取り組めるようにするためのゲームアイデアをいくつかご紹介します。単なる「やらせる」のではなく、「やりたい」を引き出すヒントになれば幸いです。
帰宅後ルーティンをゲーム化するアイデア
ここでは、すぐに家庭で試せる具体的なアイデアを3つ提案します。それぞれ異なるアプローチですが、組み合わせて使うことも可能です。
アイデア1:「おかえりミッションリスト」ゲーム
帰宅後にやるべきことをリストアップし、一つクリアするごとに達成感が得られるようにする基本的なアイデアです。タスクの「見える化」と「報酬」がポイントになります。
ゲームの進め方
- ミッションリストの作成: 子どもと一緒に、帰宅後にやるべきこと(例:手洗い・うがい、ランドセルを置く、宿題を一つやる、明日の時間割チェック、連絡帳を出すなど)をリストアップします。難易度に応じてポイントを設定しても良いでしょう(例:手洗い1pt、宿題10pt)。
- ミッションボードを用意: ホワイトボード、マグネットシート、大きめの紙などを用意し、リストを書き出します。タスクの横にチェックボックスやポイント記入欄を設けます。
- クリアの記録とポイント付与: タスクが一つ終わるごとに、子ども自身にチェックを入れてもらったり、ポイントを記入してもらったりします。スタンプを使ったり、マグネットを移動させたりするのも視覚的に分かりやすくておすすめです。
- 報酬の設定: 貯まったポイントに応じて、ご褒美を設定します。これは物質的なもの(小さなお菓子、新しい文房具など)だけでなく、親子で一緒に遊ぶ時間、好きな本を読める時間、お風呂に好きな入浴剤を入れる権利など、子どもが喜ぶ「体験」や「時間」の報酬も効果的です。週間合計ポイントでのご褒美や、目標ポイント達成での少し大きめのご褒美などもモチベーション維持に繋がります。
期待される効果
- やるべきことが明確になり、見通しを持って行動できるようになります。
- タスクをクリアするごとに達成感を得られます。
- ポイントや報酬が、内発的な動機付けのきっかけになります。
応用例
- 兄弟がいる場合は、合計ポイントで家族目標を設定し、全員で協力して達成を目指す形も良いでしょう。
- 日によってミッションを変えたり、難易度の高い「スペシャルミッション」を追加したりして変化をつけると飽きにくいかもしれません。
アイデア2:「ルート探索」ゲーム
家の中を巡りながらタスクをこなしていく流れをゲーム化し、冒険や宝探しのように見立てるアイデアです。身体を動かす要素も取り入れられます。
ゲームの進め方
- タスクと場所を結びつける: 帰宅後の各タスクを、家の中の特定の場所と結びつけます(例:玄関で靴を揃える・手洗い、リビングで宿題、子ども部屋で明日の準備など)。
- 探索ルートを設定: タスクをこなしていく順番で、家の中の「探索ルート」を設定します。簡単な地図や、場所を示すカード(「次はリビングへ!」など)を用意すると雰囲気が出ます。
- チェックポイントを通過: 設定した場所でタスクを完了したら、チェックポイントとして目印を置いたり、次の場所へのヒントカードを受け取ったりします。
- ゴールと宝物: すべてのタスク(チェックポイント)をクリアした場所をゴールとします。ゴールには「宝物」(その後の自由時間、おやつ、親からのメッセージなど)が待っている、という設定にするとワクワク感が増します。
期待される効果
- 単調になりがちなルーティンに「遊び」の要素が加わります。
- 次に何があるかという期待感が行動を促します。
- 家の中を移動することで、少しですが身体を動かす機会にもなります。
応用例
- 親が隠した「ヒントカード」を探しながら進む宝探し形式にアレンジする。
- 兄弟で協力して一つのルートをクリアする「共同探索ミッション」にする。
アイデア3:「タイムアタックチャレンジ」
帰宅後、遊び始めるまでの時間でルーティンを完了させるスピードを競う、競争要素を取り入れたアイデアです。集中力アップに繋がる可能性があります。
ゲームの進め方
- 目標タイムの設定: 帰宅からルーティン完了までの目標タイムを、子どもと相談しながら設定します。最初は少し余裕のあるタイムから始め、慣れてきたら少しずつ短くしていくのが良いでしょう。
- タイム測定: 帰宅時(または玄関での声かけ後)からスタートし、全てのタスクが完了した時点でストップウォッチを止めます。
- 記録と表彰: 毎日タイムを記録します。目標タイムをクリアできた日にはボーナスポイントをつけたり、「今日の最速記録!」として発表したりします。
- ご褒美: 自己ベストを更新した時や、設定した期間(例:1週間)内で目標タイムをクリアした日数に応じてご褒美を設定します。
期待される効果
- 時間内に終わらせようという意識が芽生え、集中力が高まる可能性があります。
- 自己記録更新を目指すことで、達成感と意欲が生まれます。
- ゲーム感覚で時間管理の感覚を養うきっかけになります。
応用例
- 特定のタスク(例:宿題の一部)のみを対象にしたタイムアタックにする。
- 家族全員で協力して、家族全員のルーティン完了タイムを競う「家族タイムアタック」にする。
ゲーミフィケーションを実践する上でのヒント
これらのアイデアを家庭に取り入れる際に、いくつか意識しておきたい点があります。
- 子どもと一緒にルールを作る: 一方的に押し付けるのではなく、「どうやったら楽しくできるかな?」と子どもと話し合いながらルールやご褒美を決めると、子ども自身の「やりたい」気持ちを引き出しやすくなります。
- 最初はハードルを低く設定する: 最初から完璧なルーティンを目指すのではなく、まずは手洗いとうがいだけでもゲーム化してみる、など簡単なタスクから始めるのがおすすめです。成功体験を積むことが大切です。
- 「ゲーム」に乗っかる: 声かけをする際も、「手洗いしなさい」ではなく「ミッション1:手洗い・うがいをクリアしよう!」のように、ゲームのルールに乗っかった声かけを意識すると、子どもも受け入れやすくなります。
- 結果だけでなくプロセスも褒める: 目標達成や高得点だけでなく、「すぐに手洗いに向かえたね!」「自分からリストを見て偉いね!」のように、自発的な行動や頑張るプロセスそのものを具体的に褒めることで、子どもの内発的な動機付けを育むことができます。
- 柔軟に変化させる: 子どもが飽きてきたり、効果が薄れてきたりしたら、遠慮なくルールを変えたり、別のアイデアを取り入れたりしてください。同じゲームでも、少しの変更で新鮮さが生まれることがあります。
- 完璧を求めすぎない: 毎日全てのルーティンを完璧にこなすことは難しいかもしれません。ゲームはあくまで子どもが楽しく取り組むためのツールです。目標を達成できなかった日があっても、責めるのではなく、次の日また挑戦できるような声かけを心がけましょう。
帰宅後の時間を「楽しい時間」に変えるために
帰宅後のバタバタした時間も、ゲーミフィケーションの考え方を取り入れることで、子どもにとっては単なる「やらされ仕事」ではなく、ワクワクする「ミッション」や「冒険」に変わる可能性があります。親御さんにとっても、繰り返し声かけをするストレスが軽減され、子どもの成長をサポートする楽しい時間に変化するかもしれません。
ご紹介したアイデアはあくまで一例です。ぜひ、お子さんの興味や性格、家庭の状況に合わせて自由にアレンジしてみてください。大切なのは、親子で一緒に楽しみながら、子どもが自ら考えて行動する力を育んでいくプロセスです。少しの工夫で、日々の育児がより楽しく、より豊かなものになることを願っています。